函館商工会議所新幹線開業対策特別委員会では、去る8月31日・9月1日の2日間、相川委員長を団長とする10名の視察団により標記視察調査を実施、現地聞き取り等により、並行在来線の経営分離によって様々な不利益が生じていることを確認してきました。
「三沢」を「函館」に読み替えれば、新幹線札幌延伸時おけるJRの経営分離が函館に与える不利益や影響は甚大であるといえ、JRによる経営継続は不可欠なものといえます。
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■運行ダイヤや車両数について
- 八戸駅での新幹線乗り継ぎダイヤが不便になった(新幹線に接続する運行体制になっておらず、乗り継ぎが最大1時間以上待たされる便もある)
- 新幹線の始発便や最終便と、三沢とを結ぶ接続列車が採算性を理由に廃止された。そのため、JR時代より東京での滞在可能時間が短くなった
- JR時代に4両編成が主体だった普通列車が経営分離後は2両編成が主体になり、乗車密度が高くなった(通勤通学時間帯は首都圏並みの超満員状態)※地域要望により後に改善
- 運賃が値上げされ、JRとは別料金となった
■三沢駅サービス環境の変化について
- 三沢駅におけるJR券(新幹線指定席など)の販売時間が短くなった(JR券販売時間10:00―11:50、13:10―15:40、16:00―16:50の3区分で、市民が切符を買いに来ても休憩時間は買えずに待たされる。また、朝一番や最終などの新幹線に急に乗る用事が出来ても、三沢では指定席の確保が出来ない)※地域要望により半年後に通し販売へと改善
- JR券のクレジットカード決済が出来なくなった(販売手数料率で逆ざやが発生)※地域要望により半年後に改善
- 予約済のJR指定券の乗車変更が出来なくなった(区間や便の変更など)
- 三沢駅でのアメリカ人(三沢基地住民等)に対する英語対応が出来ない(人材不足)※地域要望により後にアテンダントを配置
- 三沢駅駅員の業務不慣れに加え、切符発券機がJR・青い森鉄道共に1台ずつしかないため、切符売り場の窓口の待ち時間が長くなった ※後に改善
- 三沢駅前公共駐車場の利用者が半減した(地域住民が直接、新幹線の八戸駅や七戸十和田駅まで車で移動するようになった)
- 三沢駅利用者が1日約300人減少
- (視察後に発表)乗客減少も影響し、三沢駅に乗り入れている私鉄の十和田観光電鉄の廃線が決定
■八戸駅乗換環境の変化について
- 八戸駅の新幹線乗換改札が封鎖され、乗り継ぎの際に改札を出て遠回りすることとなり移動距離と時間が長くなった(青い森鉄道はもともと赤字基調のため、乗換改札を維持するためのコスト負担が出来ない)
- 青い森鉄道の切符(乗車券)は事前購入出来ず、なおかつJRとの通し購入が出来ない(すなわち東京駅では三沢行の切符が買えない)東京から三沢に行くには、八戸までの切符を購入し、八戸駅で改札口を出て、青い森鉄道の切符を買い直さなくてはならない
- 青い森鉄道の券売機が2台しかなく、繁忙期は新幹線から乗り継ぐ客で長蛇の列が出来、乗り遅れなどが生じる
- 青い森鉄道の八戸駅到着遅延によって、八戸駅発の新幹線に乗り遅れた場合に、乗れなかった新幹線の指定席が無効になり、払い戻しも出来ない(会社が違うため、乗り継ぎの保証はしない)
■その他関連事項
- 経営分離される前に、JR東日本や青森県庁から、これだけサービスが低下するという事実についての説明はなかった
■これらを踏まえ、函館駅が経営分離された場合に更に起こりうると思われる事項
- 新幹線・在来線の乗り継ぎが保証されないため、利用者は早めに新函館駅へ移動・滞在するようになり、現函館駅および駅前地域での滞在時間が減少、土産や飲食などの消費が減少
- 並行在来線事業者、バス事業者などは、採算性を理由に早朝・深夜の新幹線発着の接続を行わない可能性が高く、新幹線の最大の利点である時間短縮効果が函館市民にとっては利活用出来ない
- 以上により、新函館までの自家用車利用者が必然的に増加し、現函館駅利用者が減少、駅前地域の衰退を招く
- 経営分離によって、現在JR函館駅前に立地する「JR北海道函館支社」は縮小・移転等が懸念され、駅前地域の就業人口と経済波及に悪影響が生じる
- 経営分離によって、JR北海道が函館市に納めていた固定資産税収入(鉄道関係部分)は無くなり税収減(代わりに設立されると見込まれる第三セクター会社に関しては自治体が出資関与するため固定資産税全額減免などの措置が取られる可能性が濃厚)
- JR函館運輸所などの広大な敷地の跡地利用の見通しがない
- 以上により、中心市街地活性化を政策に掲げる現市政に反する結果を招く
- 函館市として新幹線開通に関係する直接的な税収(固定資産税)がないため、経営分離による地元負担は、受益と負担のバランスが成立しない(お金が出ていくのみ)