【質問】東京・新函館北斗間を新幹線開業時に3時間台で運行させることについての報道が多くなされていますが、「4時間の壁」にこだわるのはなぜですか。
【お答え】北海道新幹線における青函共用走行区間の減速問題や高速化方策については、これまでも本欄において何度か触れてきましたが、関連する取り組みが活発化しメディアでの報道も増えてきたことから、あらためてご説明いたします。
目的地までの交通手段を選ぶ要素は、運賃、所要時間、乗換回数、サービス内容など様々ありますが、新幹線と空路の選択において大きな要素となっているのが所要時間で、その選択分岐点が「4時間の壁」といわれるものです。東京対東北地方、中国地方の交通手段選択シェアが実際にそのことを証明しています。
函館・道南にとっては、平成17年の新幹線着工の際、東京・新函館間最速4時間以内を前提として着工され、実現されるのが当然として認識されてきたため、その後惹起した青函共用走行区間の減速問題については、失望感が強いものとなっています。
そして「4時間の壁」は、函館・道南以外の視点では、問題意識がまだ低いものであり、それぞれの組織、立場によって思惑が微妙に異なる問題であります。函館・道南から見ると、所要時間次第で新幹線の旅客流動が減少することは観光誘客や経済波及獲得の上で死活問題なのですが、札幌・道央の視点では高速化よりも早期の札幌延伸、青函共用走行区間に多額の新幹線建設費を投じている青森県の視点では同区間減速問題の抜本解決、JRの視点では貨物列車と新幹線の安全確保が最優先、など、同じ高速化を望む立場でも、「4時間の壁」問題を主張できる立場にあるのは函館・道南だけであり、世間にわかりやすく説明するために用いられている言葉ともいえます。
新幹線高速化については、昨年春と今年春、JR東日本が盛岡以北の整備新幹線区間(最高速度260km/h)において高速化試験を行っているほか、国が平成30年春に1往復のみ予定としていた青函共用走行区間高速化についても、ダイヤ調整によって平成28年3月新函館北斗開業時に3時間台の運行実現を目指すと与党整備新幹線PTが今回打ち出したことによって一歩前進したところではありますが、引き続き共用走行区間の抜本解決による北海道新幹線全便の高速化に向けて、関係者が思惑の違いを克服し、一体となった取り組みが求められます。