【質問】(前回に引き続き)新函館駅と函館市内の二次交通がどうなるのか、JRが整備するアクセス列車についても、運行ダイヤは直前まで非公表とのことですから、いっそのことリムジンバスを充実化したら如何でしょうか。
【お答え】新函館駅と函館市内の二次交通の充実化については、国内において、都市の中心部から離れた場所にある空港や新幹線駅と都心を結ぶアクセス交通の事例から、ヒントを得ることができます。
1つめは仙台空港のケースです。仙台市中心部と同空港間の距離は、新函館・函館間のJR営業距離17.9kmとほぼ同等であり、かつては市営バスのリムジンバスが頻繁に運行していました。平成19年3月に仙台空港鉄道が開業し、仙台駅・仙台空港間17.5kmを1日40往復(1時間あたり3往復程度)、所要時間17―25分程度で運行されることになったため、空港鉄道開業と同時に市営リムジンバスは廃止され、代替需要を見込んで民営のバス会社2社がリムジンバスに新規参入したのですが、需要が維持できず平成21年には民営バスも廃止となり、現在において仙台市中心部と仙台空港を結ぶ路線バスは運行されていません。
2つめは八戸駅のケースです。平成14年の東北新幹線八戸開業に合わせ、八戸市営バスでは八戸駅と同市中心街約6kmを結ぶ「新幹線シャトルバス」を運行させましたが、自社の既存路線や民営バス路線との競合によって事業継続できず、僅か2年後の平成16年に廃止となりました。しかし、同市の公共交通再生を目指した取り組みによって平成20年、八戸駅と同市中心街を結ぶ路線を市営バスと民営バスが共同運行し、運行ダイヤの等間隔化(日中10分間隔)や乗り場の共通化、共通乗車券利用可能などの施策を展開した結果、両事業者ともに運行経費削減と利用者増加が実現し、現在に至っています。
二次交通としてシャトルバス・路線バスが事業継続できるためには、競合する交通機関との関係、新函館駅と函館市内を結ぶ場合であればJRのアクセス列車とどのように役割を分担させるかが課題となります。鉄道と比較したバスの優位性は「(自宅や会社から)停留所が近い」「乗降が楽」「(乗継などがなく)所要時間が早い」「座って行ける」といった点にあり、当地においてこれらを生かしたバス事業を行うためには、美原・五稜郭・湯の川地区など、現函館駅と離れた地域を直接結ぶというような優位性が必要となります。また、八戸市のケースからも、シャトルバス単体でアクセス機能を果たすのではなく、生活交通路線を取り込む形で利用者の利便性が高いサービスを提供することが、結果的にはバス運行の継続につながることになるといえ、新函館開業においてもこうした事例を踏まえた取り組みが必要と考えられます。