【質問】(前回に引き続き)新幹線の青函トンネル区間は速度制限がかかり、所要時間が延びることに決まったとの新聞報道がありましたが、どんな影響が考えられますか。
【お答え】前回は新幹線の「4時間の壁」に触れました。目的地までの交通手段を選ぶ要素には、運賃、所要時間、乗換回数、サービス内容など様々なものがありますが、新幹線と空路の選択において大きな要素となっているのが所要時間であり、選択分岐点が4時間とされています。表は所要時間4時間前後の区間におけるJR・航空シェアの一覧ですが、新幹線のシェアは4時間を境に低くなるのがわかります。
北海道新幹線新青森・新函館間は、平成16年12月に国土交通省鉄道局が公表した事業評価結果に基づき着工されており、その際の所要時間は東京・函館間約4時間6分、青函共用区間の最高時速は260kmで計算され、費用便益比(B/C)は1.4とされていました。
その後、平成23年に鉄道・運輸機構が作成した資料では、東京・函館間の所要時間は青函共用区間時速140kmを反映させ約4時間20分、諸条件を踏まえたB/Cは1.1と再算定され、公共事業の進捗要件である1.0を辛うじて上回った状態にあります。そして同資料では、青函共用区間が時速260kmの場合は、140km時と比較して1日あたり利用者が1,200人キロ/km増加し、便益額は1,488億円増加、B/Cは1.4と見込んでいます。
これら資料から言えるのは、青函共用走行区間の速度制限は新幹線着工時に本来想定された便益を大きく阻害しているということであり、地元である函館・道南が主体的に受入環境整備を進めたとしても新幹線利用者の誘発や便益向上には限界があるということでもあります。
北海道が新幹線開業によって本来見込まれていた便益と経済効果を享受するためには国レベルでの対策が不可欠であり、地元関係機関や事業者がその重要性をしっかり認識し、早期解決を求めていく必要があると言えます。
(参考資料)JR東日本ファクトシート・JR西日本ファクトシート、鉄道・運輸機構事業評価監視委員会付属資料