【質問】2008年12月に北海道新幹線の長万部―札幌間着工方針が決まりましたが、函館に暮らす者としては、全線開通後の出先企業の撤退や乗客の「素通り」など、正直言ってとても心配です。
【お答え】札幌延伸によって出先企業の撤退や消費流出などの「ストロー現象」が生じる懸念はありますが、悲観することばかりではありません。
乗客が「素通り」してしまうのでは、という心配については、現在、札幌(新千歳)と東京(羽田)を結ぶ航空路線は年間で往復1千万人の利用客がいますので、1千万人が函館を「素通り」しているといえます。新幹線が札幌まで全通し、仮に4割の客が飛行機から新幹線にシフトしたとき、新たに400万人の「途中下車見込み客」が増えることとなり、新幹線利用者に対する函館の観光・物産アピールで途中下車を誘発させることで「素通り」の心配は払拭できると思われます。
出先企業の撤退についての課題も、個人消費面では、仮に社員10人の営業所が20社撤退してしまう場合、10人×20社=200人(世帯)、1世帯平均3人とすれば600人の人口減となり、世帯消費額を平均年間480万円(月40万)とすれば×200世帯で年間9億6千万円の流失となります。しかし、これを観光消費に置き換えると、函館市の調査結果による1人あたり観光消費3万7千円で換算した場合、観光客を年間2万6千人増加させればカバーできることになります。年間2万6千人という数字は、道央圏の石狩・後志支庁の人口が約260万人ですから、新幹線で道央と繋がるメリットをいかして、道央に住む人達の1%を毎年函館に連れてくる工夫をすればクリアできます。それでもなお、出先撤退に伴う事業上の取引高縮小や税収減などの課題は残りますが、そのぶん地場企業が新幹線を活用して販路拡大を図るなど、開業を前向きにとらえ流出分をカバーしていこうという姿勢が求められているといえます。